「旧大宜味村役場庁舎」の保存活用

「何か良い活用方法はないでしょうか」
大宜味村教育委員会の森下愛子氏から、そんな質問を投げかけられた。
背後で新庁舎の建設作業の音が鳴り響く中、約100年前に建てられた小さな白い建物は、自らの運命の行方を待ってひっそりとたたずんでいる。

 旧大宜味村役場庁舎は、戦争を経て残る現存最古の鉄筋コンクリート造建築物で、2017年に重要文化財の指定を受けた。建物の竣工は大正14(1925)年で、設計は清村勉である。平面は教会のような十字形で、1階には執務空間と中央ホール、2階には八角形の旧村長室がある。2階は海への眺望が良く、後に展望室として村民に開放されたという。

 旧庁舎は、コンクリート造黎明期の建築が状態良く残っていて、産業技術を後世に伝える生きた産業遺産である。
また、地元の材料で作られ、地元の大工により施工され、築97年経った現在でも建物の「生年祝い」が開催されるほど地域に愛されてきた建築でもある。

 しかし、重要文化財に指定されたものの、旧庁舎の活用方法は未定だ。

2023年春には新しい役場庁舎が完成し、隣接する議会棟も空き家になる予定で、個性の異なる大小2つの建物を合わせれば、活用の可能性も大きく広がる。できれば地域住民自らが利用でき、楽しめ、必要とする施設へと転用したい。大宜味村に伝わる数々の伝統芸能や伝統技術と連携した活動も可能性がある。
子どもから高齢者まで多世代が利用できる居場所つくりが期待される。

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