Michele DE Lucchiの構想力

イタリア人の建築家ミケーレ・デ・ルッキは、照明デザインなど前衛的で実験的プロジェクトを数多く手がけてきたプロダクトデザイナーとして知られている。
しかし、実際に彼の講演を聴いてみると、違う印象を持った。予想以上に、大きな視野を持った建築家である。
イタリア文化会館で開かれたシンポジウムでは、将来を見据えたプロジェクト「Earth Stations Interactors」について、中心に話された。彼自身の事務所名もStudioからCircleへと変更し、相互作用やつながりを目的としたプロジェクトを多く計画している。
「Earth Stations Interactors」とは、ミケーレ・デ・ルッキの造語で、地域固有の技術と素材で作られ、誰でも出入り可能な多目的空間を指す。
世界各地に、地域それぞれの素材と技術で建設することを想定し、交流スペースだったり、遊び場だったり、スポーツ施設だったり、地場産業の支援施設だったりと、地域固有の用途を持つスペースとして定義されている。
南アジアには竹による大きなドーム建築が計画され、砂漠地帯では粘土によるレンガ造建築が計画されていると言った具合だ。
しかし、決して単なる伝統的な建物ではなく、最新テクノロジーとの融合で計画されている。どのプロジェクトも、見たことのないモノばかりだ。

人工知能AIの台頭で、今後、建築家の仕事は無くなるのではないかという不安がある。
人工知能AIは、これまでの事例を学習して最適解を見つけ出すことには適した知能を持つため、一般的な課題や条件に対するプランや提案などは、近い将来、人間よりも賢くなるだろう。
しかし、ミケーレ・デ・ルッキは、今後、人工知能AIが台頭することによって仕事は変わるものの、人間の五感に訴える仕事はそう簡単には無くならないと確信していた。
彼の考える「Earth Stations Interactors」という構想こそ、人工知能AIでは考え出すことのできない、「これまでに無かったこと」=「今後、地球上で必要なモノ」=「創造性」であるからだ。
こうした分野こそ、これからの建築家が必要とされる領域なのではないだろうか。

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